実は、かけ算をこんなに早い段階で教える国はめずらしい。日本には九九というものがあるから、それが可能なのである。欧米では、かけ算を理屈で覚えなくてはならないので大変だし、大人になってもかけ算が苦手な人は、ゴロゴロいる。九九という偉大な暗記術があるからこそ、かけ算が簡単に習得でき、九九を身につけることでそれ以後の学習が飛躍的に楽になるのである。今は、九九が覚えられないのも、その子の個性だとして、無理に覚えさせないという方向になっている。しかしこれも無茶な話である。記憶力にも逃がしてはいけない「旬」がある。人生で最も記憶力のいいこの時期に、子どもに記憶を詰め込むことは必要である。無理な「重荷」は、子どもの発達を阻害するが、適度な「負荷」がよりその子どもの能力を伸ばすことは先にも述べたとおりである。それどころか、適度な負荷もなく育った子どもは温室育ちの植物と同じく、人間としての基本的な生命力や抵抗力のない、知性の虚弱なタイプに育つことが多い。まさに「生きる力」がつかないのである。